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鬼のような形相で、「絶対に、逃さないんだからね！」と睨みつけてくるシャーリー。 同情を滲ませながら見つめてくるリヴァル。 困ったように笑うミレイ。 汚物を見るような表情のニーナ。 そんな彼らに囲まれて、今生徒会室にいた。 居心地の悪さに肩をすくめていると、シャーリーが口を開いた。 「説明して！」 先程も言われたセリフ。 「えーと、たしかカレンがどうとか・・・」 「そう！カレン！どういうつもりなのよ、スザクくん！」 何の話かさっぱりわからないのに攻められ続け、憔悴しきったスザクに助け舟を出したのはミレイだった。 「あー、ねえ、シャーリー」 「何ですか会長！」 「ちょーっとだけ、スザクくんと話、させてくれるかな？ちょっとだけ」 ね、いいでしょ？とミレイが言うと、シャーリーは口をへの字に結んだ。 「・・・はい」 スザクを追い詰めていたシャーリーは、ミレイの言葉にしぶしぶながら承諾し、スザクのそばを離れ、距離を取った。意味の解らない威圧感から解放され、スザクは思わずホッと安堵の息をこぼす。破天荒だが思慮深いミレイが苦笑交じりの表情を浮かべていて、理由なく攻められている訳では無いことはわかった。 「ねえスザクくん、一つ質問していいかしら？」 「はい」 「あなた、カレンとお付き合いしてたりする？」 「いえ」 迷うことなく、きっぱりと即答した。 子供のカレンとも何度となく顔を合わせたが、なんというか、成長した彼女は確かに美人だが、彼女の性格は恋愛の対象外でそういう感情は抱けないし、考えたこともなかった。どちらかと言えば戦友・・・いや、ゼロを守るライバルといった感じだ。 あまりにも早い回答に、ミレイは「あ～そうなんだ」と、やはり苦笑しながら頷き、リヴァルもどこか納得顔。ただ、シャーリーは「付き合ってないのに！？」と、更に怒り心頭といった顔になった。 「じゃあもう一ついいかしら？」 「はい」 「スザクくんに、子供っているの？」 その質問に、思わず「は？」と、間の抜けた返答をしてしまった。 「子供、ですか？」 子供の頃のことを質問されているわけではないらしい。子供はいるのか、ということは、自分に息子あるいは娘がいるのかという質問だろう。 質問の内容に心当たりがなく、思わず目を瞬かせた。 でも、どうしてそんな話に？いや、これはきっと聞き間違いだよね？ 「そ、子供。スザクくんに赤ちゃんがいるって話があるのよ」 「は！？僕に、子供って、え！？赤ちゃん！？」 やはり聞き間違いではなかったらしい。 身に覚えのない話に、スザクは思わず声を上げた。 「とぼけないで！カレンとの子供、いるんでしょ！？」 「え！？ええええ！？カレンと僕に、子供！？ないっ！それは無いです！！」 シャーリーが机をバシンと叩くと同時にぶつけてきた言葉に、全力で否定した。 カレン？カレンとの子供！？僕とカレンとの子供だって！？なにそれ笑えない！！ 必死に、ほんとに冗談抜きで必死に首をブンブン振りながら否定すると、シャーリーは「え？」と声を上げたあと、毒気が抜かれたようにぽかんとした表情で見つめてきた。 「やっぱり、そうよねぇ」 うんうん、全部わかってるわよ。という表情でミレイは頷き、だよなぁと言いたげにリヴァルは笑った。ニーナとシャーリーは、何？何なのという顔をしている。もちろんスザクも同じ顔だ。 「あのね、スザクくん。いま君には赤ちゃんがいるって噂があるのよ、双子の赤ちゃんで、男の子と女の子。しかも、母親はカレン」 「ええ！？な、なんでそんな噂が！？僕とカレンが！？」 どうして？なんで！？ 軽くパニックを起こした僕を見て、シャーリーは完全に勘違いだったとわかったのか、ものすごく申し訳無さそうな顔を向けてきた。 だが、これでわかった。 カレンは学園でも1.2を争うほど人気のある女性だ。 隠れ親衛隊までいるらしく、確かに黙っていれば美少女だから、そういう取り巻きがいてもおかしくはないと納得するほどだ。その女性と僕との間に子供がいるという噂が流れ、男子から嫉妬の視線を、女子からは「カレンがいながらユフィの元へ行った」と非難の視線を向けられたのだ。 どうやら恋人がカレン、ユフィは仕事先という考えにはならないらしい。 これでカレンが普通に通学していればそんな噂は立たなかっただろうが、幼児化した彼女もまた、母親とともに今は姿を隠している。それが産後で動けないし、赤ちゃんに母乳をあげるから来れないという話になったようだ。 ルルーシュはナナリーの事があるから、苦しいとはいえ一応不在の理由を用意したが、元々病弱設定で登校日も多かったカレンの理由までは用意していなかった。 シュタットフェルト家の方も、実の母親が暇を貰ったことで、二人で姿を消したとあちらの継母は思っているだろう。 だから、特になにか手を打つ必要性があると、誰も考えていなかった。 それがまさか、こんな噂が流れる原因になるなんて。 「誰なんですか、そんな根も葉もない噂を流したのは！」 これは怒ってもいいはずだ。 普段は温厚で「怒ったりなんてしないよ？」という雰囲気のスザクだが、流石に怒りを露わにすると、ミレイとリヴァルは顔を見合わせたあと目をそらし、しばらく考えこんだシャーリーはなにか思い当たる事があったのか、はっとした顔の後、肩を落とし申し訳無さそうな顔をした。 どうやら三人は理由を知っているらしい。 「心当たりはあるんだけどね・・・でも、私たちが流したわけじゃないわよ？」 そう前置きしてから、以前、スザクが子供服を買いに行った時のことをミレイは話した。だが、噂を流したのはあれを目撃したミレイ、シャーリー、リヴァルではない。だからこそ「ああ、やっぱりあれは・・・」となったシャーリーがキレたのだ。自分たちだけではなく、他に確証がある誰かから話が流れたのだから、シャーリーはスザクに子供が、それもカレンとの子供がいると信じきってしまった。 スザクは、ああ、ルルーシュの服を買いに行った時にお母さんとカレンの服の話をしたなと思いだし、あの場面を見られていたんだと理解した。だが、買ったのはどれも3歳児用の服。カレンが休んだ時に出産したのだとして・・・あのお腹に双子がいたとは普通信じないんじゃないかという常識的な話はおいといて、生まれたての赤ん坊にはどう考えても大きすぎる服だ。 もし、あの場面を他の誰かに見られていたとしても、新生児用でない以上、カレンとの子供用を買ったなんて想像はしないだろう。 では、どうしてそんな噂が広まったのだろう。 四人は首を傾げながら頭を悩ませた。 そんな中ニーナはというと、この展開についていけないのかキョロキョロと全員の顔色を窺っていたが、話が進むにつれて次第に顔を、目を逸し始めたような気がした。 それが気になって、スザクは声をかけた。 「ニーナはこの話、知ってた？」 イレブンであるスザクに話しかけられた事で、ニーナはビクリと体を震わせ、おずおずと口を開いた。 「だ、だって、ミレイちゃんたちがスザクくんとカレンちゃんに子供がって話をしたから！わ、私は悪く無いわ！！」 彼女の言葉で、噂の出処が決定した。 この生徒会室でも、その時目撃した内容の検証という名の妄想を三人は繰り広げたことがあったらしい。そして、その場にはニーナもいた。パソコンに向かい作業をしながら聞いていたため、一から十まで全て耳に入れていたわけではない。だが、部分的に入ってきた言葉で、スザクとカレンは関係を持っていて、カレンは妊娠。最近休んでいるのは双子を出産したからで、その買い出しをしているカレンの母とスザクを三人が目撃したのだと結論づけた。 あの儚く美しいカレンにイレブンが手を出した。 ありえない話だった。 きっと無理やり・・・その妄想は次第にエスカレートしていた。 クラスにも馴染めないニーナだが、それでも時折クラスメイトが話題を降ってくることがある。その時にニーナは、だれも知らないこの話をしたのだ。 そこからさらに尾ひれが付き、現在に至る。 噂の出所が自分たちだと解ったシャーリーは、顔を真っ赤にしたり青くしたりした後スザクに平謝りし、噂は必ず消すから！これは私の責任だから！と言った。 最初は二人の子ではないとわかっていたのに、それでもつい興味本位からここで話題に出したこと。そして周りに流されスザクを追い詰めたことを猛省していた。 これにはミレイとリヴァルも同意した。 この噂を消すために動いてくれるようだった。 ニーナだけは「そんな勘違いをさせた三人が悪い、私は悪く無い」と言い続けていた。 **** これを書いた当時、シャーリーに子供の話をされて「まさか、ルルーシュ達のことがバレた！？」・・・という展開は一切考えていませんでした。 今思えば Σ(☉ω☉)＜え？何の話！？ じゃなくて (๑òωó๑;;;;;) ＜ルルーシュ達の事がバレた！どうしよう！！；；；； になる率高い気が。スザクは見た目幼児でもルルーシュ＝子供認識してないんだよきっと。と言い訳しておく。（逃走） |